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介護教室における歯科保健推進の資料〜脳梗塞、脳出血の既往のある患者さんへ〜

1.基本的なこと

 脳梗塞とは脳血管の狭窄または閉鎖で血流障害がおこり、脳組織の壊死をきたした状態をいう。
 脳出血とは脳の血管が破れて、血種を形成し、神経症状を起こした状態をいう。
 ともに生命に関わる重篤な状態であるが、最近は治療方法が進歩し、救命率は高くなったが、重い後遺障害を残し、Q.O.L.(生活の質)が著しく損なわれていることが多い。高齢者の脳血管障害の70%以上が脳梗塞です。


2.歯・口における特徴的な症状

  1. 脳における障害により、麻痺による運動障害や感覚障害が認められます。麻痺側の下口唇下垂、口唇閉鎖不全、舌を前方に突出した時の偏位、頬粘膜の動き不良、口蓋垂の偏位などが認められます。
  2. 以上より、構音障害、摂食、嚥下障害が認められ、嚥下性肺炎を起こすこともあります。
  3. 抗凝固療法により出血傾向があり、歯肉からの出血で不潔となったり、口臭がでたりします。
  4. 手指の麻痺がある時は、歯ブラシを使うことが不可能で、口腔清掃ができず歯周病が進みます。
  5. 内服する薬によっては、歯肉の増殖が認められ、口腔内はなお不潔状態となります。


3.口腔ケアのポイント

  1. 上肢の麻痺、筋力低下は自力での口腔ケアを難しくしてます。利き手交換や、器具の工夫が必要になります。健康時のようにできないことから、苛立ちや、口腔保清に消極的になりやすいので、励ます必要があります。口から味わう楽しみ、会話の楽しみ、口腔内のケア後の爽快感を体験させましょう。
  2. 麻痺側口内は自浄作用が低くなり、食物残渣などで不潔になりやすく、口臭を発生しやすい。訓練して健側で行えるようになるまで、介助が必要でしょう。
  3. 誤嚥防止のために、口腔ケア時の体位はなるべく座位をとり、取れない場合は45〜60度位起こし、健側に傾けて行います。含嗽水を口に含む時は健側を下にした姿勢で行ないます。むせやすいので、むせないケアを目指す。
  4. 口腔内の観察にはペンライトなどが便利で、歯、歯肉、頬粘膜、舌、口蓋部をよく観察する。食物の残渣、歯肉の腫脹、発赤、出血、潰瘍、痛みなどがないか観察します。義歯がある場合は、外して粘膜および義歯をよく観察します。破損していないか、食物や薬剤の残渣がないか、プラークが付着していないかなど。
  5. 歯ブラシ、歯間ブラシ、巻綿子、舌用ブラシ、スポンジブラシ、電動ブラシ、義歯用ブラシなど便利なグッズもあるので、専門家の指導を受けるよう勧めましょう。


4.歯科治療時の問題点

  1. 疾患の状態によっては歯科治療が不可能で、口腔ケアによる口腔清掃、保清が目標となることもあります。
  2. 歯科治療にあっては抗凝固療法による止血困難や、麻痺のために治療中の誤嚥、嚥下障害がよく見られるので、内科主治医との密な連携の上で行うよう勧めましょう。
  3. 通院不可能、寝たきり状態であれば、医療保険、介護保険での訪問診療、訪問口腔衛生指導を受けられるよう、ケアーマネージャーなどと連絡をとりましょう。
  4. リスクの高い患者の場合、関連科医師との連携がとれる二次病院での治療を勧めましょう。


生活習慣病予防教室等参考リーフレット集

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